湿潤なアメリカ東海岸から生まれた次世代ULバックパックメーカーHyperlite Mountain Gear(ハイパーライトマウンテンギア)。Cuben&Polyesterのハイブリット素材を採用。2011年アメリカBackPackerマガジンが選んだULバックパック。
仕様
- 重量
- 798g
本体:688 g
アルミステー:110 g - 容量
- 40〜45L
- 素材
- Cubic Tech社 Cuben&Polyesterハイブリット素材
ULを新たな高みへ導いた
2010年代ULバックパックの金字塔
決して色あせないフラッグシップ
HMG ウインドライダー
Hyperlite Mountain Gear(ハイパーライトマウンテンギア)
ウルトラライトハイキングという文化が芽吹いたトレイルがアメリカ西海岸のPacific Crest Trail(PCT)だとすれば、種子が最初に蒔かれた場所はアメリカ東海岸のAppalachian Trail(AT)だといえます。20世紀前半”グランマ エマ”の伝説の舞台になった東海岸。21世紀、この地にウルトラライトハイキングを継ぐべき次世代ガレージメーカーが産声をあげたのはまさに当然の帰結な のかもしれません。
HYPERLITE MOUNTAIN GEARはAppalachian Trailの終着点であるメイン州に 居を構える新興ウルトラライトガレージメーカー。1998年にGossamer Gearがカリフォルニアに産声をあげて以来、数多くのガレージメーカーがアメリカに産まれました。その多くはPCTスルーハイカーに対してギアの開発& 販売をおこなう関係上、西海岸から中央部にその活動拠点をおいてきました。現代ウルトラライトハイキングの流れはPCT(西海岸)が中心なのです。
そんな中、異端児として産まれたのがHYPERLITE MOUNTAIN GEAR。ULガレージメーカーの主宰者はPCTコミュニティーの中でネットワークを築いていますが、HMGはそのコミュニティーとは関係のない東海岸で Pierrie兄弟の手によって産声をあげます。自らがATスルーハイカーである彼らの元に集まる仲間もAT、PCT、JMTスルーハイカーが多く、また西海岸のガレージメーカー主宰者から比べると年齢も一回りほど若い、文字通り「若いULガレージメーカー」なのです。
ATスルーハイカー率が高いHMGが目指しているのは、湿潤なアメリカ東海岸に対応したウルトラライトハイキングギア。雨が多く、森林限界下でブッ シュが茂るトレイルも多い東海岸。その地をウィークエンドだけでなく、スルーハイク&ロングハイクできるハイキングギアなのです。
「Ultralight(軽く)」「Durable(頑丈で)」「Water resist(雨に強い)」
ややもすれば、バランスを追いかけたありきたりのギアになりがちなコンセプトですが、しっかりとUL的に仕上がっているのは彼らがリアルなスルーハイカーだからかもしれません。
Windrider2400(ウインドライダー)
WindriderはHMGの創業当時から変わらないまさにフラッグシップモデルといえるバックパック。2021年現在、HMGでは様々な派生モデル(Southwest、NorthRim、Junction)を発表していますが、それが可能なのもベースとなるこのウインドライダーの完成度があってこそ。また容量についても2400(40L)、3400(50L)、4400(60L)、5400(70L)がいまでは展開されていますが、2011年のHMG創業当時につくられたウインドライダーのオリジナル容量は2400。UL志向のスルーハイカーに必要な容量は2400。これで十分ということなのです。当店では軽量化というスタンス、そしてウインドライダーの原点という点にも敬意を表して2400ウインドライダーを基本にセレクトしています。
仕様
主素材として採用されているのは超軽量のフィルム素材で有名なDCF(旧名称 Cuben Fiber)を製造しているCubic Tech社によるCuben&PolyesterのDCFハイブリット素材。現代の基準では劇的に軽いわけではありませんが、それ以上に素材特性のバランスが優れています。軽く、頑丈で、防水性をそなえているこの素材は湿潤なアメリカの東海岸の気候に適しています。オレゴン州ポートランドで遠征用アルパインバックパックを作り続けるCilo gearも採用するこの素材はUltralight & Durableを最も実現している素材のひとつといえるでしょう。
またHMGではバックパックが水を含んで重たくならないように背面側は腰回りをのぞき、メッシュパッドを排しています。確かに背面にメッシュパッドを装備したモデルの方が誰もが躊躇せずに使えます。しかし重たくなること、保水すること、雪が詰まること、これらを考えるとメッシュ素材は極力使いたくないという判断なのでしょう。Cuben & PolyesterのDCFハイブリット素材をせっかく使う以上、こうしたフィールドでの合理性へのこだわりは当然といえるでしょう。なお背面には日本のアルミステー(53g)を装備、バックパックの剛性感を大きくサポートしています。
本体荷室はベルクロテープで閉じられるロールトップクロージャー方式。その上部にはY字のストラップが搭載されています。一本締めストラップではないのでマットなどの外装の際もしっかりと固定することが可能です。
ウエストベルトにはダイニーマナイロンによるポケット装備。ベルト自体は脱着不可。
メッシュポケット容量は約4L。メッシュの強度への不安の声はいまだ多いですが、HMGのメッシュはかなり強度が高く引っかかった枝の方が折れてしまいます。またメッシュが切れた際にも補修は可能です。
防水性向上のためバックパックの縫い目はボトム以外はすべてシーム済み。縫製の構造上シームテープが貼れないボトムについても外側から目止め剤でシームすれば、完全防水とはいかないまでもかなり高い防水性を持たせることが可能です。
まだまだ西海岸のオーソドックスなULブランドが主流だった2010年代前半、とことんまで軽さを追求しているわけではないこと、DCFという新素材の採用がファッション的と一分ハイカーに揶揄されてしまったこと、北米市場においてもこうした意見にさらされてきたHMGですが、この10年間全くブレることのないモノづくりの姿勢で自らのスタイルを世の中に広めてきました。湿潤なアメリカ東海岸でこだわりの末に生まれたこのバックパックが同じく湿潤な日本においてひろく受け入れらるようになったのは必然ともいえるでしょう。世代的にも、土地的にも、2000年代に培われた西海岸のULハイキングを2010年代に新たなステージに導いてきたのがHyperlite Mountain Gear(ハイパーライトマウンテンギア)、そのフラッグシップが2400Windriderなのです。
ハイカーズデポでは2011年秋から取り扱いを開始、はや10年が経ちました。HMGの世界最初のディーラーとしてこの10年間共に歩んできました。HMGが生まれた当時のように2020年代においても新たなガレージメーカーが活躍していますが、HMGと一緒に常に新たなチャレンジをしていければ嬉しいです。