道具に手を加える Black Diamond / Distance Carbon Z編

 持っている道具に手を加え自分好みにする当シリーズ。パーツ初級編・応用編の次はトレッキングポールに手を加えます。ちなみに作業はまあまあ面倒です。

道具に手を加える パーツ初級編
読み物
2025/04/11
道具に手を加える パーツ初級編
 「この道具のこの部分がこうだったら、もっと使いやすくなるのに…」。色んなアウトドア用品を使っていく中で、そうぼやく人は沢山いるでしょう。でも大半の人は不満を覚えながらもそのまま使っています。なぜならやり方が分からないし、面倒くさそうだから。このシリーズで紹介するのは、持っている道具にあれこれ手を加えて自分好みにする方法です。第1回目は市販の樹脂パーツを使った「パーツ初級編」。ものぐささんへ贈るとても簡単なカスタマイズです。    バックパックやテント、ウェアなどアウトドア用品には様々な樹脂パーツが使われています。バックル・アジャスター・コードロックなどの名称を聞いたことがなくても、見れば「あー知ってる」となるものばかり。最初に基本的なことをお話すると、これらパーツにもメーカーがあります。Duraflex・ITW・WOOJINなどの海外ブランドに日本のニフコやYKK。90年代のアメリカのアウトドアメーカーはDuraflex一強でしたが、最近はITWやWOOJINも多く使われます。また昔のニフコは野暮ったいデザインが印象に残っていますが、近年はとてもスマートになりました。挙げれば他にもパーツメーカーはありますが、アウトドア用品に使われるのは大体このあたりです。これらのメーカーから多種多様なパーツが出ていて、更に同機能モデルが複数存在します。身近なものに例えるなら、スーパーの醤油売り場にキッコーマン・ヤマサ・ヒガシマルなどの醤油が並び、それぞれから特選・減塩・うすくちが販売されている感じでしょうか。    醤油ならブレンドしても使えるけど、樹脂パーツにそんな融通は効きません。「バックルのオスが折れたから合うものが欲しい」という相談をよく受けますが、バックルはメーカーが違うと適合しないのは勿論、同じメーカー同士でもモデルが違うと嵌りません。つまり全く同じ物を用意するか、オスメス両方の交換となります。パーツのメーカーやモデルが特定できないと私達も相談に応えられないので、その際はパーツ現物をお持ち頂くのがベストです。前置きが長くなりましたが、そんなパーツ達を使って道具をあれこれしてみましょう!   バックパックにトレッキングポールを固定する  まずは楽ちんな作業から。サイドポケットがないバックパックへ長尺物を取り付ける際によく使う手です。一般的な登山用バックパックには同様の物がよく付属してますが、ULバックパックだと省略されていることも珍しくありません。ちなみに写真のバックパックはZimmer BuiltのChip Pack。 用意する物:コードロック2個 バンジーコード(ゴム紐)適当な長さ2本 手順1、コードロックにバンジーコードを通して結ぶ x 2つ 手順2、作った2つをバックパックに取り付ける 手順3、バンジーコードをトレッキングポールに回してコードロックで絞る     バックパックの正面にバンジーコードを張り巡らせる  これも簡単なカスタマイズ。バックパック正面にバンジーコードを配置して、脱いだウェアを固定したりバックパックの容積を圧縮したりできます。皆さんどこかで一度は見ているあれです。 用意する物:コードロック1個 コードフック1個 バンジーコード適当な長さ1本 手順1、バンジーコードの適当な場所にコードフックを通しておく 手順2、バックパック正面にバンジーコードを一周通す 手順3、コードロックをつけて結ぶ     タープやテントのガイポイント(張り綱を取り付ける箇所)に長さ調整パーツを設ける  これまた針も糸も使わない工程なのに便利な改造。ロープの長さ調整に自在を使うのは普通ですが、これなら自在と違いガイポイントギリギリのところまで引けます。ここ10年くらいで初期仕様からこうなっているテントやタープも増えました。写真のタープはカモシカスポーツのルーフ1。 用意する物:コードアジャスター必要な数だけ 手順1、ガイポイントにコードアジャスターをくぐり通すだけ      今回紹介した作業に必要なパーツはハイカーズデポでも販売していますが、同様の機能を持つものなら何でも構いません。この手のパーツはアウトドア用品店なら置いている事が多いので、近所のお店に相談してみるのも手です。もし適当なパーツや相談相手が見つからなかった時には、三鷹までお越しください。パッと見は用途不明なパーツも沢山並んでますが、使いこなせば貴方の道具がより使いやすくなること請け合い。あれこれ試して自分好みの道具を作り上げていきましょう。(樋口)

道具に手を加える パーツ応用編
読み物
2025/11/02
道具に手を加える パーツ応用編
 持っている道具にあれこれ手を加えて自分好みにするこのシリーズ。前回の「パーツ初級編」ではとても簡単な作業で済むものを紹介しました。今回の応用編はパーツの組み合わせ+ひと手間が必要なので少し面倒ですが、自分の道具を使いやすくするためにも試してみる価値はあります。   チェストベルトを付ける  「いつの間にか胸のベルトがなくなっていた」。バックパックのパーツ紛失でよくあるのがチェストストラップ。最近は切り欠き付きパーツを用いるモデルが増えたため、「気がつけばない…」という事も多々あります。そんなチェストストラップを自分で作るお話です。縫い作業があるのでハードルはやや高めですが難しくはありません。先に文中で使われる語句の説明をしておくと、デイジーチェーン:バックパックのショルダーベルトに縫い付けられているテープ部分、コキ:写真の「日」みたいな形をしたパーツ、です。   用意する物:シングルバックル1個(写真はホイッスル付)・コキ2個・テープ適当な長さ2本 手順1:テープをシングルバックルに通して縫い留める(手縫いでも問題ありません) 手順2:縫ったテープにコキを通してからデイジーチェーンに通す 手順3:テープ末端を折り返してコキに再度通す 手順4:テープ末端を折り返して再々度コキに通す 手順5:もう1本のテープも手順2〜4の要領でデイジーチェーンと繋げたら完成 ※テープ抜けを防ぎたい場合は末端を折り返して縫う(縫わなくても機能はします)    「縫い物だけは絶対にしたくない」「バックパックにデイジーチェーンがない」人もいるでしょう。そんな時には以下参照。  左写真のようにコキをもうひとつ追加して手順2〜4を繰り返せば、針仕事を回避できます。難点はパーツ点数が増えるので見栄えがスマートじゃないところ。機能的に差はありません。コキはテープを何かに固定する際とても役立ちます。縫い物が苦手だけど道具に手を加えたい人には、良い相棒となってくれるでしょう。デイジーチェーンがないのはカジュアルブランドのデイパックによくある仕様ですが、その場合は右写真のようにアクセサリーカラビナで引っ掛けてください。ミニカラビナ2点・コードアジャスター1点・細引き適当な長さで作れます。これは見栄えに加えてフィット感も少し劣りますが、ないよりはマシだし機能はしてくれます。   パーツに切り欠きを加える  「このパーツを此処に取り付けたいけど縫製を解くのも縫い直すのも怠い」。そんな時に役立つのが、パーツを熱切断して切り欠きを設ける方法。これなら手間を省いて目的を果たせます。これも作業自体は難しくないのですが、火を使うので応用編。 用意する物:バーナー マイナスドライバー 切り欠きを設けたいパーツ  手順1:マイナスドライバーの先端を熱する 手順2:切り欠きを設けたい箇所に熱したドライバー先端を当てる 手順3:パーツを溶かし切って完成 ※ドライバーはどうなっても構わない安いもの。別の何か(似たような形状・サイズ・熱を加えても大丈夫)やハンダゴテでも代用可 ※熱切断時に臭気を発するので注意!   ここまでが下準備。では出来上がった切り欠きパーツを使い道具に手を加えていきます。   ドリンクホルダー 用意する物:切り欠きを設けたコードアジャスターバックル1個・コードロック1個・細引き適当な長さ・バンジーコード適当な長さ 手順1:バックルとボトルに細引きを繋ぐ 手順2:コードアジャスターバックルの切り欠きをデイジーチェーンに通す 手順3:バンジーコードをデイジーチェーンに通して完成   カメラホルダー 用意する物:切り欠きを設けたバックル1個・コードロック1個・マジックテープ適当な長さ・バンジーコード適当な長さ 手順1:バックルとカメラにマジックテープを通す 手順2:バックルの切り欠きをデイジーチェーンに通す 手順3:バンジーコードをデイジーチェーンに通して完成   小物用フック 手順1:フックの切り欠きをデイジーチェーンに通す 手順2:好きなものを引っ掛けて完成    今回はバックパックの作例ばかりですが、テント内のループにフックを付けてライトを吊り下げたり、パックラフトのタイダウンにコードアジャスターバックルを付け荷物を固定したりと、何にでも応用が可能です。そして最初から切り欠きを設けてくれているパーツもあります。何もかも面倒くさいものぐささんに朗報ですね。これらは道具のカスタマイズだけでなく、野外でパーツが破損した場合のリペア用としても便利です。  「コレを取り付けるのにどのパーツを使えばいいか分からない」や「何となくのイメージしかないけどコレをこうしたい」など、行き詰まったら店のスタッフにご相談ください。実際にパーツを手に取って一緒に考えれば、大体のことは解決するはずです。(樋口)

 手を加えるポールは軽量コンパクトモデルとして定番のディスタンスカーボンZ。使っている人も多いのではないでしょうか。一般的にダブルストックとも呼ばれるトレッキングポールを両手に握り歩く姿は、今や登山ですっかりお馴染みのスタイルとなりました。登りの労力を軽減し下山時の膝の負担を和らげてくれるお役立ちアイテムですが、その一方で使わないハイカーもいます。私もそんな一人ですが、理由は手に何かを持つのが好きじゃないから。しかし、万が一怪我をした時の用意・テントやツェルトの設営ポール・同行者に貸す、などの為に携行します。軽量なので重さは気になりませんが、グリップ部のフォーム材が嵩張り閉口することもしばしば。ただでさえ使う機会が少ない道具なので少しでもコンパクトにしたい、が今回の目的です。トレッキングポールを入山から下山まで常に使用する人だと、使い心地が落ちる内容なので読み飛ばしてください。

 

1、このグリップ部のフォーム材を剥ぎます。当然ですが剥がせば元に戻りません。本当に不要な部分なのか、もう一度考えて作業します。

2、フォーム材を剥ぐための切れ込みを入れます。刃を入れる場所はどこでも構いません。

3、切れ込みを終えるとこんな感じ。

4、フォーム材を剥いでいきます。

5、フォーム材は強力な両面テープで貼り付けられているので、剥がすのが少し面倒。

6、全て剥がすとこうなります。

 

7、フォーム材を剥がしたポールにもう少し手を加えます。

8、ストラップも自分には不要なので、ポールとストラップを繋ぐ金属ピンを抜きます。ストラップを残したい場合は、ピンの出っ張りをヤスリやルーターなどで削ると安全です。

9、ペンチで摘んでピンを抜きます。

10、ポールに残っている両面テープを剥がしていきます。これがとても面倒で今回の作業の山場。嫌なら小細工せずそのまま使うのも良いでしょうし、上からテープを巻いて目隠しするなら適当な剥がし具合でも構いません。性格が出る部分なのでお好きにどうぞ。

11、シール剥がしで綺麗にした後にアルコールで脱脂してピカピカの状態。

12、不要になった部材の重さは15g/1本。つまりペアで30g。軽量化が目的なら労力に見合わない成果でしょう。

 

13、剥がしたフォーム材に代わり薄い滑り止めテープを巻きます。今回使用したのは3Mのもの。同機能なら何でも構いません。ロードバイク用のバーテープなどは様々な色や柄があるので選ぶのも楽しそう。

14、テープを巻いていきます。

15、巻き終えるとこんな感じ。

16、手を加える前と後の比較。ハンドル部の嵩張り具合差は一目瞭然。

17、最後に細引きでループを設けます。これは後述の用途と家で保管する際のぶら下げ用なので、不要な人は無視してください。

18、完成。

 

おまけ

19、ディスタンスカーボンZは先端部のチップを交換できる仕組みになっていて、そのためにネジが切られています。

20、そこへ異ネジ径を繋ぐ変換ネジをねじ込みます。用いたのは「ネジ径5mmxネジ長15mmーネジ径8mmxネジ長15mm」。

21、ねじ込むとこんな感じ。目的のために錆びにくいステンレス製を選んでいます。

22、ここにもう一つのパーツを繋ぎ…

23、

24、ハンドルに設けたループにゴム紐を繋げば

25、トレッキングポールとしても使える折り畳みカーボン銛の完成。あくまで代用品なので継ぎ数の少ないスピアと較べればガタつきますが、海沿いを旅する際に「綺麗な海で素潜りを楽しむついでに献立が増えたら良いな」くらいの姿勢なら良いのでは(海で使用した後は塩抜きをお忘れなく)?トレッキングポールを他の何かに代用できないかと考える人は古今東西珍しくなく、昔だとLEKIの「カメラ用一脚」になるものや、Luxurylite社の護身用「トレッキングポール槍」なんてのもありました。

 

 ここまで手を加えると、折れた時などに修理をメーカーにお願いできないかもしれません。ブラックダイアモンドの日本代理店であるロストアローは修理体制がとてもしっかりしている会社ですが、ユーザーが手を加えた製品は安全を保証できないため断られる可能性があります。海外から製品を個人輸入した場合にも似ていますが、自己完結できず日本の代理店やメーカーに修理を頼りたい人は手を加える前に熟考してください。ちなみに同社の修理理念は公式HPで「ロストアローのリペア哲学」として紹介されています。同業者が見ても感心するので是非どうぞ。(樋口)