MINI

ジャパニーズULバックパックのアイコンともいえる「山と道MINI」。ジッパーポケットを採用したフロントポケット、極薄ビバークマットの背面パッドへの転用など、差別化されたデザインと機能は色褪せません。シンプルさとユーザーフレンドリーさのバランスに優れた汎用性の高いバックパック。【 個人使用との判断が難しいご注文には対応できかねる場合がございます。】

差別化されたデザイン
汎用性の高い機能
日本のULバックパック
「山と道 MINI」

Elm
Gray
Black

2012年、山と道2つめのバックパックとして誕生した「ミニ」。素材やパターンをブラッシュアップしながら多くのハイカーに愛されてきたロングセラーモデルです。いまやジャパニーズULバックパックのアイコンといえるまでに成長しました。日本のトレイルでULバックパックを見ることがさほどめずらしいことではなくなってきましたが、それはこのモデルに負うところも多いはずです。デイハイクを楽しむフレッシュマンハイカーから、日本を代表する山岳レースの出場アスリートまで、多くの方をひきつけるには理由があるのです。

 

差別化されたジッパーポケット

現在のULバックパックの源流といえるのはレイ・ジャーディンが著書『Beyond Backpacking』(改題『Trail Life』)の中で解説しているレイウェイモデルです。パッドもフレームもないただの袋にしっかりとした厚みのショルダーハーネス、正面と両サイドにメッシュポケット、これだけを配置したシンプルなバックパックです。ウエストベルトすら省かれたこの構造こそがすべてのULバックパックの基本形です。
メッシュポケットが採用された理由は雨に濡れたレインウェア、結露で濡れたタープやテントフライを収納するためです。バックパック内部をドライに保つ、濡れたギアを随時乾燥させる、ということが意図されています。しかしポケットの使い方はハイカーそれぞれの好みがあってよいはずです。レイウェイモデルが雛形になったことでULバックパックのほとんどがメッシュポケットを採用することになりました。わたし自身この使い方を支持していますが、多様性が失われるのは残念でもあります。こうした経緯をふまえると、ミニのジッパーポケットには他のULバックパックとは差別化された意味があることがわかります。実際にジッパーポケットを採用していたGOLITEのJamが廃盤となったいま、このスタイルは非常に貴重です。

山と道の独自性といえるフロントのジッパーポケット

このフロントポケットは単なるポケットだけでなく、バックパック本体のパッキングのしやすさにも影響を与えています。ミニ本体は70デニールの高密度ナイロンが採用されています。バックパックとしては非常に軽く、薄い素材でありまさにUL的です。しかし生地が薄くしなやかなことから荷物をしっかりと押さえ込むことをやや苦手としているのです。しかしミニでは本体前面の大部分がジッパーポケットで覆われます。本体素材とポケット素材との二重構造になります。これによりバックパックのカタチを保ち、荷物をしっかりとホールドする機能を果たしているのです。ミニが軽くて使いやすいを実現しているのはこのポケットデザインだからこそといえるでしょう。

 

ユーザーフレンドリーな仕様

ULバックパックは軽く&シンプルであることが基本です。それゆえにハードルが高いものだと誤解されることがあります。ULバックパックを使うにはユーザー自身が一手間くわえなければならないという誤解です。実際には山道具に限らずどんな道具も使い手自身が手を加えることは、使い勝手を向上させるうえで必要なことだと思いますが、ただでさえバックパックの軽さ&薄さに不安になっているわけですから、それ以上の不安要素は取り除こうというのが山と道のユーザーへの気配りです。

ULでは珍しい?ハイドレーション対応

*旧カラーでの画像となります

昔からULバックパックはハイドレーション用のスリットが付いていないものがほとんどでした。工夫すれば仕様にはなんら問題ないのですが、他の一般的なバックパックと同じ使い勝手であることは、はじめてULバックパックを選ぶハイカーをホッとさせてくれます。

出し入れがしやすいのびのびサイドポケット

*旧カラーでの画像となります

ペットボトルや水筒が2本収納できるサイドポケット。もっとも力学的なバランスがよい背面上部で背負った際にも、できるかぎし出し入れにストレスを感じないよう伸び率の高いパワーメッシュが採用されています。ボトルの出し入れの際にバックパックの背負う位置を調整する一手間を省いてくれます。

初期装備されましたウエストベルト

*旧カラーでの画像となります

ミニのウエストベルトはテープ状のシンプルなものです。発売当時、このウエストベルトはフロントポケットにしまわれており、必要ならば各自でお付け下さい、という仕様でした。ULバックパックはウエストベルトがなくてもなんら問題ない、そうした山と道のULへのこだわりがここにでていたのです。しかし後年、ウエストベルトは最初から装着されるようになりました。必要ならば自分で付けてくださいではなく、大丈夫だと感じたら是非外してみてください、というやわらなかスタンスへの転向といえるでしょう。はじめてULバックパックにトライするユーザーが思い切れるよう、そんな優しい眼差しが感じられます。

バンジーコードの取り付けで悩む必要はありません

ULに限らずバックパックには様々なループが付いています。「これ何に使うんだろう?」と疑問に思うことがよくあるはずです。慣れてくるとそうしたループを見るにつけ「こんな感じにつかえる、あんなものも取り付けられる」とアイデアが生まれてきます。工夫次第でなんでも付けられるのです。しかしそれを最初からリクエストするのではなく、後日のアイデアになるようにバンジーコードが初期装備されています。

  • 衣類などをはさめるフロントポケットのバンジー
  • ポールやアイスアックスも固定できるサイドのバンジー
  • マットや衣類を固定できるボトムのバンジー

ユーザーがまず付けたいと思うものに絞ることで、ユーザー自身が工夫するとっかかりを提供しています。

いつかは使いこなしたいビバークシート

ミニの背面には同社のミニマリストパッドを四つ折りにしたものが入っています。これがいわゆる背面パッドとなります。ULバックパックを語る際に背面パッドやフレームをどこまで省略するかは意見がわかれるところです。特に経験豊富なハイカーになればなるほど、個人差がでる部分なのです。しかしはじめて使うハイカーにとってはフレームはともかく、パッドもないって、と腰が引ける理由にもなりかねません。
ビバークシートともいえるミニマリストパッドなら、パッドを装備する別の意味を与えることができます。休憩時の座布団として、まさにビバークシートとして、山岳レーサーならこれで普通に睡眠をとる方もいるはずです。

 

素材変更によるアップデート

ミニ誕生から10年をむかえた2021年、本体素材が変更されました。変更にあたってのポイントは「耐久性の向上」です。70デニールのHT(high-tenacity=高密度)ナイロンを使用することで従来よりも強度と耐久性を向上させています。さらに裏面のコーティングは一般的なポリウレタンよりも加水分解しにくいポリカーボネート(PC)によるコーティングをセレクト。独自のこだわりを込めたオリジナル素材をミニの本体素材として使用しています。この本体素材が高い耐久性と耐水性を持つ素材に変更されたことでポケット素材も2022年にアップデート。従来のX-Pac VX07から山と道独自開発素材の「BLACK UHPE Fine Grid(以下ブラックウープ)」に変更されたのです。ダイニーマやスペクトラといった商品名で流通している超高分子量ポリエチレン素材を2mm間隔で織り込んだこの素材は軽さと耐久性の両立を目指す中で山と道がたどり着いた現時点での解答ともいえる素材です。非常に面白い試みとしては加水分解を避けるため防水処理のためのポリウレタンコーティングを廃止したことです。そう皆さん一度は体験したことがあるバックパック内部がベタベタしてくるあれです。もともと防水コーティングとはいえ生地が保水してしまえば浸水はありますし、コーティングで重たくなる、そして日本の気候では確実に加水分解が進行する。防水は使用者各自がおこなうことで思い切ってポケットの防水コーティングを廃止したのです。2021年の本体素材アップデートで本体は耐久性の高いポリカーボネートコーティングを施すようになりました。ある意味、本体には高い耐水性を、ポケットには通気性をともいえるでしょう。ポケットについてはジッパーも止水ジッパーを廃止。耐久性と操作感の向上を目的としています。2022年モデルからの山と道ミニのフロントポケットは「ブリーザブルなポケット」「中身が見えないメッシュポケット」といった捉え方ができるのではないでしょうか。ちょっとした素材変更かもしれませんが、その目的を読み解くとより一層、使う工夫を楽しめるでしょう。

 

ULバックパック、はじめの一歩

使い勝手がよいとひとことでまとめるのは簡単にすぎます。ULなのにいろいろ付いているよねと言うのもやっかみです。山と道ミニはウエストベルトの仕様で説明したように実はUL原理主義的な一面をもつゴリゴリのバックパックです。ULへの熱い想いが込められているバックパックです。そしてそれはULをはじめての方にも実感して欲しいという使命にも通じているように思うのです。
だからこそ、はじめてのユーザーが最初の一歩で挫折しないよう、気持ちよくその一歩をふみだせる仕様にこだわっているのだと思います。そしてミニがサポートしているのははじめの一歩だけなのです。それ以降はしっかりと使いこなすために、自ら考えて使っていくというスタンスが求められます。ただユーザーフレンドリーなだけではないのです。使いこなす余地がしっかりと残されています。だからこそ、デイハイクを楽しむフレッシュマンハイカーから、日本を代表する山岳レースの出場アスリートまで、多くの方をひきつけるのです。