Southwest40 BLK

急峻な岩場、藪が繁る森林、タフな環境を想定した耐久ULハイキングパック。ウインドライダーの最も古くからのバリエーションとしてハイカーに支持されてきました。ポケットの水抜き穴の改善で湿潤気候へも対応。日本でも使いやすいモデルになりました。

仕様

重量
910g(M)
本体:800g
アルミステー:110g
容量
本体 40L
ポケットなど拡張容量 9.5L
素材
DCH150
サイズ
XS、S、M、L
カラー
ブラック

急峻な岩場でも
藪が繁る森林でも
揺るぎない安心感

本体はブラックDCH150、フロントおよびサイドポケットはダイニーマナイロンを採用。タフなULバックパックの代名詞がサウスウエスト。

ハイカーズデポでは2011年から取り扱いをはじめたHyperlite Mountain Gear(ハイパーライトマウンテンギア)。HMG創業時のオリジナルラインナップは「ウインドライダー2400」「ポーター3400」「アイスパック2400」の3モデル。その中でもウインドライダー2400はアパラチアン・トレイルのスルーハイクを念頭においたハイキングバックパックとして長くHMGのフラッグシップモデルであり続けてきました。そのウインドライダーはこの10年間でポケット素材を多様化させることで様々なバリエーションを生み出しました。
アメリカ南西部のデザートエリアで固いトゲを持つ灌木への対策として生まれた「サウスウエスト」。深いドライキャニオンを有する中西部での立体的なオフトレイルハイキングで岩に擦れても安心な「ノースリム」。多様な地理的特徴や気候帯に幅広く対応する「ジャンクション」です。このなかで最初にうまれたサウスウエストはタフなULバックパックの代名詞的存在です。ちなみにハイカーズデポ店主の土屋が最初に購入したHMGのバックパックはサウスウエストでした。

Soutwest 40(サウスウエスト40)

フロントポケットがダイニーマナイロンのポケットになることでバックパックのイメージが大きく変わります。
  • 擦れが気になるサイドポケットもダイニーマナイロン製。ウエストベルトポケット、サイドストラップも完備。
熱くないですか?と聞かれる背面ですが、汗を吸ったり、雨が染み込んだり、雪がついたりしないメリットは大きい。シンプルな背面。

サウスウエストのポケット

ウインドライダーのポケット素材を変更。バリエーションとして最初に生まれたのがサウスウエストです。

フロントもサイドもダイニーマメッシュ。アメリカ中西部のハイキングでは棘が多い灌木などがメッシュポケットに引っかかります。それを回避するため丈夫なダイニーマナイロンでポケットが作られています。
かつては非情に小さかったフロントポケットの水抜き穴が大くなりました。排水効率が向上したことでフロントポケットが水たまりになることが少なくなりました。
サイドポケットの水抜き穴。こちらも大くなっています。

サウスウエストはフロントポケット、サイドポケットともに擦れや突き刺しに強いダイニーマナイロンを採用しています。かつて不安視されていた水抜き穴のサイズも現在は改善、かなり大きくなり排水面での不安が大幅に減少しました。耐久性重視でサウスウエストを使いたいけれども雨が降った時に排水できるか不安を感じていたハイカーも少なくありませんでしたが、現行のサウスウエストならば安心して使用できます。
排水の問題さえクリアになれば、ブッシュでの引っかかりや岩場での擦れを考慮したダイニーマナイロンのポケットが与える安心感は大きいでしょう。

40Lという容量

2024年現在、HMGでは多様なモデル(Windrider、Southwest、NorthRim、Junction、Porter、Icepack)が存在し、それぞれのモデルで豊富なサイズ(2400/40L、3400/50L)、4400/60L)、5400/70L)が展開されています。それを可能にしているのがベースとなるオリジナルラインナップ「ウインドライダー」「ポーター」「アイスパック」の完成度にあります。2011年のHMG創業当時につくられたウインドライダーのオリジナル容量は2400/40Lです。UL志向のスルーハイカーにとって容量は2400/40Lで必要十分、これならば軽さをしっかりとアドバンテージにできるという考えです。ハイカーズデポ でもULバックパックであること、そしてHMGの原点に敬意と共感をもってウインドライダーは2400/40Lサイズをセレクトしてきました。その考え方はウインドライダーのバリエーションであるサウスウエストでも変わりません。軽量化を志向してハイキングバックパックを検討するならば、まず考えるべきは2400/40Lだと考えます。

ウインドライダーやサウスウエストなどの40Lサイズならば一般的なベアキャニスターBearVaultの475サイズが横に収納できます。

ちなみに3400/50Lは2400/40Lの吹き流し部分を伸ばしただけの構造になっています。スタビライザーを装備しないシンプルな構造を採用しているHMGのバックパックでは肩より上の部分が長くなるとバランスをとるのが難しくなります。またバックパックの全長が長くなるため底の方の荷物の出し入れの際に吹き流しが邪魔になることもあります。3400/50Lを検討されるハイカーはそうした点も念頭にご検討ください。

ブラックの意味

主素材として採用されているのは超軽量のフィルム素材で有名なDCF(旧名称 Cuben Fiber)のハイブリット素材DCHです。現代の基準からすると劇的に軽い素材ではありませんが、特性バランスが優れています。軽く、頑丈で、防水性をそなえているこの素材は細かな起伏が多く、多雨湿潤なアメリカ東海岸の気候風土に適しているだけでなく、Ultralight & Durableなバックパックを製作するにあたってベストな素材のひとつだといえます。
そのDCHですが、HMGでは色によってその生地厚を変えていることにも注目です。HMGのシンボルカラーともいえるホワイトは軽さと強度のバランスが優れているDCH50、ブラックはより強度に重きをおいたDCH150を採用しているのです。DCH150はホワイトでも擦れなどのストレスを最も受ける底部について採用している生地になります。したがってHMGのバックパックにおいてブラックは非常に強い生地で作られているといえるのです。
HMGサウスウエストもホワイト、ブラック両カラーで展開されていますが、ハイカーズデポでは高強度、対候性、汎用性というサウスウエストのコンセプトをふまえて、あえてブラック一色での取り扱いとしています。

水を吸わない、雪がつかない背面

HMGではバックパックが水を含んで重たくならないように腰回りをのぞきメッシュパッドを排しています。背面にメッシュパッドを装備したモデルの方が確かに快適性は高いでしょう。誰もが躊躇せずに使えるはずです。しかし重たくなること、保水すること、雪が詰まること、こうした条件を考えると昔のアルパインパックのようにメッシュ素材を極力使用しないという判断にも合理性があるのです。DCHを使ったULバックパックというコンセプトである以上、こうしたシンプルさと合理性へのこだわりは当然ともいえます。
なお背面には二本のアルミステー(110g)を装備、バックパックの剛性感と積載重量をサポートしています。

徹底した目止めとパック内部の視認性

防水性の高いDCHを採用しているサウスウエスト。その防水性向上のためバックパックの縫い目は底部と背面上部以外はシームテープで目止めを施しています。この目止めについては製造年度によって仕様が異なりますので注意が必要です。縫製の構造上シームテープでの処理が不可能なボトムについても外側から目止め剤で処置すれば、更に高い防水性を持たせることが可能ですが、決して完全防水ではないためご注意ください。
また黒いバックパックは内部も黒いと中の荷物が見えにくくなると言われますが、背面内側が白いため、このようにしっかりと底部まで中を見通せます。

サウスウエスト内部。背面側内部が白のため視認性は悪くない。底部と背面上部以外はシームテープによる目止めが施されている。

その他仕様

サウスウエストの仕様は基本的にはポケット以外はウインドライダーと同じです。

Y字ストラップはマット、ロープ、ヘルメット、パックラフト、スタッフバッグ など様々なものを安定感をもって固定可能です。
ダイニーマナイロンのポケットを装備したウエストベルト
ナイロンストラップやバンジーコードを取り付けられるコキ付タブがフロントポケットの左右両脇に計4ヶ所配置されています
本体右側面上部には下向きにハイドレーションチューブ用のポートが配置されています

HMGは2011年の創業から10年以上、ブレることのないモノづくりの姿勢で自らのスタイルをハイキングシーン、アウトドアシーンに広めてきました。同年に誕生したシューズメーカーALTRA同様、2010年代のハイキングシーンを牽引してきたリーディングカンパニーであり、アイコンです。湿潤なアメリカ東海岸でこだわりの末に生まれた彼らのバックパックが同じく湿潤な日本においてひろく受け入れらるようになったのも必然といえるでしょう。2000年代に培われた西海岸のULハイキングを2010年代に新たなステージに導いてきたのがハイパーライトマウンテンギア。

サウスウエストはそのHMGにおいて長らく「タフなULバックパック」として愛されてきたモデルなのです。


2010年代ULのアイコン
Hyperlite Mountain Gear(ハイパーライトマウンテンギア)

ウルトラライトハイキングという文化が芽吹いたトレイルがアメリカ西海岸のPacific Crest Trail(PCT)だとすれば、種子が最初に蒔かれた場所はアメリカ東海岸のAppalachian Trail(AT)だといえるでしょう。20世紀前半”グランマ エマ”の伝説の舞台になった東海岸。この地にウルトラライトハイキングを継ぐべき21世紀のメーカーが産声をあげたのはまさに当然の帰結な のかもしれません。ハイパーライトマウンテンギアはAppalachian Trailの終着点であるメイン州に 居を構えるウルトラライトギアメーカーです。1998年にGossamer Gearがカリフォルニアに産声をあげて以来、数多くのULギアメーカーがアメリカに産まれました。その多くはPCTスルーハイカーをターゲットにギアの開発& 販売をおこなう関係上、西海岸から中西部にその活動拠点をおいてきました。ウルトラライトハイキングの歴史はPCT(西海岸)中心に積み重ねられてきたといっても過言ではないのです。
そうした潮流の中、異端児として2011年に産まれたのがハイパーライトマウンテンギアです。ULギアメーカーの主宰者はPCTコミュニティーの中でネットワークを築く例が多いのですが、HMGはそのコミュニティーとは距離を置いた東海岸で Pierrie兄弟の手によって誕生しました。自らがATスルーハイカーであり、パックラフターでもある彼らの元に集まった仲間もまたハイカーであり、パックラフターであり、アルパインクライマーでした。ハイキングに特化した西海岸のULギアメーカーと異なり、アウトドアアクティビティ全般にまたがるウルトラライトギアを提案するHMGは年齢も西海岸のガレージメーカー主宰者から比べると一回りほど若い世代にあたります。まさに文字通り「次世代のULギアメーカー」なのです。

そんな次世代メーカーが2010年代にULハイク、ロングハイクの世界を大きく飛躍させます。北米では2010年以降、PCTやATのスルーハイクを目指すハイカーが激増します。新世代のハイカーが支持したのがHMGのバックパックでした。ロングハイクする際のスタイル、テクニックとしてのウルトラライトハイキングも一気にアウトドアシーンにおいて市民権を得ます。そのアイコンとなったのがシューズではALTRA、バックパックではHMGだったのです。1970-80年代にワークブーツとフレームパックがバックパッキングムーブメントのアイコンであったのと同じ現象です。HMGは2010年代のハイキングシーンを代表するULギアメーカーと言っても過言ではないのです。

HMGが目指しているのは、湿潤な気候と細かい起伏が続くアメリカ東海岸に対応したウルトラライトギア。雨が多く、森林限界下でブッ シュが茂り、急で細かなアップダウンが延々と続く、そんな自然環境の東海岸。その地でハイキングし、パックラフトし、クライミングを楽しむためのギア。

「Ultralight(軽く)」「Durable(頑丈で)」「Water resist(雨に強い)」

アウトドアギアの王道ともいえるコンセプトをUL的に仕上げているのは彼らがリアルなスルーハイカーであり、パックラフターだからに違いありません。